2008年06月13日

中間値の定理---その証明

 実数の連続性 を議論し,上(下)に有界な数の集合の上限(下限)の存在定理 を証明した.それらは
中間値の定理: 閉区間[a,b] で 関数 f(x) が 連続 で,(簡単のために) f(a)<f(b)とする.
このとき,f(a) と f(b) の中間の値 k( f(a)<k<f(b) )に対して,f(c) = k を満足する c( a<c<b )が開区間(a,b) の中に存在する.
を証明する流れの中にあった.その定理の意味は 図から明らか であるが,厳密な数学的論理体系の下では証明されねばならない運命にあった (-_-;).


 なぜ証明されねばならないかというと,数学においては,その基本において,1つの数=1点から出発せねばならないからである.実際,関数の連続においては,特定の1点(x = a)における連続の定義から始まる.したがって,証明は,各場面において,局所的に進められることになる.そして,最後に,我々の‘映像的直観的理解’に御墨付を与える証明が完了する.

 中間値の定理を証明するのに必要な定理を証明することから始めよう:
関数の符号に関する定理: 連続関数 y = f(x) が x = a で負( f(a)<0 )のとき,或る正数δがとれて
| x - a |<δ ならば(必ず) f(x)<0
とすることができる.f(a)>0 のときも同様の議論ができる.
この定理は,連続関数がある点で負(正)のとき,その近所には同じ符号になる領域があると述べている.この定理の証明には関数の連続のε-δ記法を利用しよう: 関数 y = f (x) が x = a で連続である とは,
正数ε を任意に(いくらでも小さく)与えるとき,それに対応して(いくらでも小さい)正数δ が定まり,
| x - a | < δ ならば(必ず) | f (x) - f (a) | < ε
が満たされることをいう.
それでは証明です:
関数 y = f(x) は x = a で連続だから,f(a)= -ε<0 とすると,上の定理より,或る正数δがとれて
| x - a | < δ ならば | f (x) - f (a) | < ε
とすることができる. | f (x) - f (a) | = | f (x) + ε | < ε より -ε< f (x) + ε < ε. よって,f (x)<0 が得られる.(証明終)
 それでは,中間値の定理の証明です:
f(c)= k を f(c)- k = 0 (右辺が0)と書く方が便利なので,連続関数 F(x)= f(x)- k を導入しよう.このとき, F(a)< 0 < F(b)である.以下, F(c)= 0 となる c (a<c<b)が存在することを示す.
さて,実数の集合S:
S = { x∈[a,b]|F(x)< 0 }
を考えよう.F(a)< 0,F(b)> 0 (つまり,a∈S,bnot∈S)だから,Sは上に有界な数の集合である.したがって,上限の存在定理より,Sの上限が存在し,それを c (a<c<b)とする( cより一寸でも大きい数はSの上界である).明らかに,F(c)は正・負・0のどれかである.

(ア)F(c)<0 つまり c∈S としてみる.すると,関数の符号に関する定理よりF(x)< 0 となる区間|x - c|<δ (c - δ<x <c + δ)が存在する.その区間に属する c’(c <c’<c + δ)はSに属する(F(c’)< 0 )はずである.ところが,c <c’だから,c’はSの上界であり,F(c’)≧ 0 でなければならない.これはF(c’)<0 に矛盾するので(ア)F(c)<0 と仮定することはできない.

(イ)F(c)>0 としてみる.すると,関数の符号に関する定理よりF(x)> 0 となる区間|x - c|<δ (c - δ<x <c + δ)が存在する.その区間に属する c’(c - δ<c’<c )はF(c’)> 0 を満たすはずである.ところが,c’ <cだから,c’はSに属し,F(c’)< 0 でなければならない.これはF(c’)> 0 に矛盾するので(イ)F(c)>0 の仮定は誤り.

以上の議論から,(ウ)F(c)= 0 の可能性のみが残る.したがって,f(c)= k (a<c<b)となる c が存在する.(証明終)
 これで,実数の連続性という数学の基本仮定に基づいて,“見れば分かる”中間値の定理を証明した.これを読んだ人に理解してもらいたいのは,証明の細部より先に,何故にこの定理を証明せねばならないのか ということである.それが分かれば,大学の微分積分学のテキストに中間値の定理が言及されているかが分かります.『高校数学+α』でも §§14.3.1 微積分学の基本定理(p.435〜436)の証明の際に言及しています.

 これで一段落です.この話題の全体を眺めたい人は右下の 実数の連続性 をクリックしてください.次の話題に何を持ってくるかは考慮中です.

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posted by TaD at 00:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 学問 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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